本学会と研究倫理
今日、日本では、医学研究に関する様々な倫理的問題が世間の耳目を集めています。基礎医学研究における不正行為が大きく報道される一方、当学会が主に扱う臨床医学研究においても、インフォームド・コンセント取得、リスク・ベネフィット評価、データ管理・解析、結果発表など、様々な局面で倫理的な遂行が求められています。
しかしながら、古くから研究倫理を発展させてきた欧米などと異なり、日本では、研究倫理に関する理論的・実証的な研究の蓄積がほとんどなされてきませんでした。学術的に十分な検討がなされないまま、目先の問題にその場しのぎの対応がなされ、研究現場に混乱がもたらされることもありました。
医学研究を健全に遂行するための基盤を作るには、研究倫理に関する知を集約する場が必要です。しかし、日本にはそのような場が少なく、数ある学会においても極めて限られていました。
そこで、2014年の本学会総会において、これまでに築かれてきた研究倫理を普及させることとともに、日本の研究倫理の現状分析と、政策決定・制度設計への提言などを目的として、本学会に研究倫理委員会が設置されました。これからは、この研究倫理委員会を中心に、研究倫理の構築について本学会が日本の主導的役割を果たしていきたいと考えています。