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一般の方へ:市民のための薬と病気のお話

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市民のための薬と病気のお話

薬の質問箱

薬物動態

Q2吸収

A2

吸収の過程

皆さんにとって最も身近な経口剤(飲み薬)である錠剤を飲みますとまず胃の中に入ります。錠剤は比重が大きいので胃の底にしずんで速やかに崩壊するとともに薬物が溶け出します。

いっぽう、カプセルの場合、飲み込んだ直後はほぼ胃液に浮かんだ状態で存在します。カプセルの材質であるゼラチンが溶解した後、薬物はいったん粉末状で胃の底に落下します。

その後、薬物の溶解がおこります。胃のぜん動により小腸内へ移行した後、小腸の吸収細胞から薬物分子は吸収されます。服用後、薬効が早くあらわれる場合には、胃での溶解、小腸への移行、小腸からの吸収がすみやかに行われています。通常、薬物は15~30分後には循環血液中に到達します。

しかし、胃酸で分解される薬物―例えば抗潰瘍薬オメプラゾール(商品名オメプラール、オメプラゾン、エンプラール、オプランゼ、オメプトロール、オメプラゾール「SW」「TSU」「アメル」「トーワ」「メルク」、オメプロトン、オメラップなど)、抗潰瘍薬ランソプラゾール(商品名タケプロン、スタンゾーム、タイプロトン、タピゾール、ラソプラン、ラプラゾール、ランソプラゾール「MED」「アメル」、ランソラールなど)、抗生物質エリスロマイシン(商品名エリスロシン、エリスロマイシン「サワイ」、タカスノンなど)―や胃で溶解すると胃粘膜を荒らす可能性のある抗血小板薬アセチルサリチル酸(商品名バイアスピリン、アスピリン「KN」「メルク」、ニチアスピリン、ゼンアスピリン)ですと、腸溶性コーティングをほどこすことにより胃での薬剤自体の溶解がおこらないように工夫がなされています。

腸溶性の薬剤ですと、服用後に小腸から吸収されて循環血液中へ薬物が到達するには1~2時間の経過が必要となります。したがって、腸溶性コーティングの施された錠剤やカプセル剤を服用する際には、口の中で絶対にかみくだかないようにしましょう。

また肝臓において激しく代謝による不活性化を受ける薬物(例えばニトログリセリン)の場合には、服用後、小腸から吸収されて門脈内に入り、肝臓を通る際に大部分が代謝により消失することになります。

狭心症の発作時にはニトログリセリンの舌下錠(商品名ニトログリセリン、ニトロペンなど)が用いられていますが、この場合、口腔粘膜から吸収されたニトログリセリンは肝臓を通過することなく直接に循環血流中へ入りますから、吸収速度は速くかつ吸収率も高いので的確に効くというわけです。

次に注射剤からの薬物の吸収について考えましょう。

静脈内注射(静注)にて薬物の液剤を投与しますと瞬時に薬物の全量が循環血液中に入りますので、薬物の効果は瞬時にあらわれます。また筋肉内注射や皮下注射にて投与する場合でも循環血液中にいたるのに多少の時間を要しますので、静注時と比べますとわずかですが薬効の出現は遅くなります。

しかし、経口薬剤を服用する場合と比べますと、筋注・皮下注時の薬効のあらわれる速度は圧倒的に早いといえます。

(回答者:高田寛治)


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