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一般の方へ:市民のための薬と病気のお話

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市民のための薬と病気のお話

病気の質問箱

感染症

Q1感染症について

A1

感染症とは

感染症とは、何らかの微生物が人体に入り、生体に局所的または全身的な反応(主として炎症)を引き起こした状態です。

それらの微生物は病原体とも呼ばれ、大きく原生動物、原虫、真菌、細菌、マイコプラズマ。リケッチア、クラミジア、ウイルスに分類されています。

そのなかで、細菌感染症は、種類も多く頻度も高いのですが、有効なお薬(抗菌薬)も多く開発されてきました。また、病原体が増殖し症状を惹き起こす臓器により、呼吸器感染症、消化管感染症、尿路感染症、皮膚感染症などにも分類されますが、局所症状に対する治療以外に、病原体に対する治療が根本的な治療になります。

日本では、感染症に対応するための法律として、従来の「伝染病予防法」、「性病予防法」および「エイズ予防法」が廃止・統合され、1999年4月1日から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(いわゆる感染症新法)が施行されています。

感染症の発病

人体に感染するすべての微生物が病原性を示すものではありません。

たとえば大腸菌などの腸内微生物は人体にとって有益な役割を果たしているといわれております。また、微生物を受け入れる人体の状況によって、病原性が現れることがあります。

たとえば、家族で同じ物を食べても発病する人とそうでない人があります。病原体に対する抵抗力の違いによるものと考えられます。また、病原体による感染症を発病しても、いったん回復すれば、その病原体に対する抵抗力が獲得されことが知られており、免疫と呼ばれています。

免疫不全状態など、病気や薬物により病原体に対する抵抗力が弱まっているときには、通常病原性の低い細菌などでも重症な感染症を引き起こすことがあります。

感染症の治療

感染症の治療のためには、感染臓器の特定とともに、感染微生物の決定が重要です。

感染症の治療に使われる抗菌薬には、その作用機序から有効な病原体(細菌)の範囲があり、ひとつの抗菌薬がすべての細菌に有効ということはありません。

そこで、抗菌薬を使用するにあたっては、感染症の存在を確認し、抗菌薬の感受性を調べることが重要となります(薬剤感受性試験)。もちろん、過去の経験や統計などから、病原菌や有効な抗菌薬を推定して使用することもあります。

近年、抗菌薬の使用が多くなるにしたがって、薬剤が効きにくくなってくる耐性菌の出現が問題となっています。

薬剤感受性試験

感染症の治療に抗生物質を用いる場合、適切な薬剤の選択に「薬剤感受性検査」は不可欠な検査のひとつです。医師が治療薬剤を選択する場合、ふつうは薬剤の体内動態、宿主の状態や免疫能、副作用などを総合的に判断し、投与可能な薬剤のうちもっとも適切な薬剤を選択して治療に用います。そのなかで、特定された感染症の起因菌に対して有効で適切な薬剤を決定するために「薬剤感受性試験」が行われます。

薬剤感受性検査には種々の方法があり、薬剤含有ディスクを用いて拡散による阻止円の有無を調べる「薬剤感受性ディスク法」、試験管内で菌の発育が阻止される最小の薬剤濃度を求める「最小発育阻止濃度測定法」などがあります。

耐性菌とは

「耐性菌」あるいは「薬剤耐性菌」とは、抗菌薬(抗生物質)に対して抵抗力を持ってしまい、薬が効きにくくなった菌のことです。耐性菌にかかると、薬を使っても病気が治らなくなってしまいます。

細菌が耐性を獲得するメカニズムとしては、1)薬剤不活性化酵素の誘導産生、 2)細胞膜透過性の変化3)薬剤作用点の変化などがありますが、その遺伝情報は、細菌が染色体とは別に持っている小さな遺伝体「プラスミド」上に存在している場合が多くあります。

細菌が他の細菌と接合することにより、このプラスミドが接合した細菌に乗り移っていくことにより、耐性菌が増殖します。さらに、プラスミドの上には一つではなくて複数の耐性遺伝子が乗っていることがあり、「多剤耐性菌」が生まれることになります。

近年問題になっている耐性菌としては、「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」や「多剤耐性緑膿菌」があります。

耐性菌を減らすためには、一つは医療現場で抗菌剤の使い方に注意することが必要です。また、家畜の飼料に加えられている抗菌剤についても、世界的に論議が行われています。

感染症の予防

感染症の予防のためには、まず病原体に接触しないようにすることです。そのために、消毒や滅菌がおこなわれます。対象となる病原体により適切な消毒薬や消毒方法を選択することが必要です。

また、病原微生物に対する免疫を誘導し感染症を予防する目的で、弱毒化した病原体または死菌を生体に投与する予防接種も、ウイルス感染症を中心に行われています。接種される物質はワクチンと呼ばれています。

現在有効な予防接種としては、麻疹(はしか)、風疹(三日ばしか)、百日咳、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、ポリオ(小児まひ)、破傷風、日本脳炎 、インフルエンザ、B型肝炎 、結核などがあります。

(回答者:鍵谷俊文)


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