市民のための薬と病気のお話
急性白血病の造血幹細胞移植療法
薬物療法と移植療法の使い分けの基本は、先に述べました。ここでは、今行われている移植療法の種類についてのべておきます。
造血幹細胞移植は、用いる幹細胞が、他人のものか自分のものかにより、2つに分かれます。他人の場合を同種幹細胞移植と言い、これがうまくゆくためには、赤血球のABOに相当する白血球の血液型であるHLAが、一致している必要があります。
兄弟の場合は1/4の割合で、即ち4人兄弟がいれば一人はあう確率がありますが、兄弟と一致せぬ場合、骨髄バンクに登録されているドナーから検索し、HLAが一致した方がいれば提供を受けることができます。また、最近は臍帯血バンクからの臍帯血移植も行われる様になりました。
自己幹細胞移植は、あらかじめ採取しておいた自分の幹細胞を用いる移植で強力な化学療法をしたあとの血液系の副作用のレスキュー(救援)に用います。
一方、同種移植はレスキューをめざすと同時に、移植された他人のリンパ球が患者の体内にわずかに残っている白血病細胞を攻撃するGVL効果(移植片対白血病効果)もねらっておこなわれます。
治療に化学療法と移植のどちらを選ぶか、移植を選ぶとすればどの移植を選ぶかは、1つ1つの症例により専門的に判断する必要があります。主治医から十分に説明をきき選択・決定する様にして下さい。
(回答者:上田孝典)