市民のための薬と病気のお話
高血圧の治療について
薬を飲むと体調が悪くなるので薬は飲みたくない
患者さんの中に血圧が上昇した状況で長期間生活して来たため、血圧が下がると不調感を訴える方がいます。長い目で見れば、血圧を下げる方が有用であることが判っています。医師と相談して薬を飲みましょう。
どの様な薬で治療?
環境要因による悪影響の改善すなわち生活習慣の改善を行い、十分な血圧の低下がなければ薬物療法を始めます。カルシュウム拮抗薬・アンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬・利尿薬・ベーター遮断薬・アルファ1遮断薬などが多く用いられます。
なぜ新しい薬が必要か?
血圧の上昇は心拍出量か血管抵抗の増加の結果です。特に高齢者に見られる様に血管抵抗が増加した(血管が細くなった)結果の血圧上昇であることが多い様です。従って血管に作用して、これを広げるような様々な薬の開発が望まれます。色々な薬の中から患者さんに応じた、適切な薬の選択により効果的な降圧が期待できます。
例を考えてみましょう。アンジオテンシノーゲンから出発した物質がレニンによりアンジオテンシンIになります。これにアンジオテンシン変換酵素が働いてアンジオテンシンIIになり、血管にあるアンジオテンシンII受容体に働き、血管が収縮し、血圧が上昇します。降圧薬として良く使われているアンジオテンシン変換酵素阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬は図に示した所に働き、アンジオテンシンIIの量を減らす、またそれが受容体に付くのを防ぎ血圧を下げます。ところが研究の進歩のおかげで、アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIになるのに別の道があることが判り、アンジオテンシン変換酵素阻害薬では十分にアンジオテンシンIIの生成を押さえきれない可能性があります。
そこでアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIに変化するのに必要なレニンの働きを抑える、レニン阻害薬が出来れば、アンジオテンシンIの生成量が減り、血圧上昇が抑えられる可能性があります。このような薬が現在開発中です。
(回答者:野村憲和)